「直感」。

理路整然と語られるロジックより受け入れ易いとしたら、それはそこに情感と啓示があるからだろう。このR’DISCOVERYでは、Ritzwellの設計思想や美意識をオーナー様がすらすらと代弁してしまう場面がよくある。

その度にオーナー様の審美眼と深い洞察に感銘を受け、人と家具との幸福な響き合いを見出す。今回のオーナー様が受け取ったのは、直感の引力に導かれた一閃の啓示といえるのではないだろうか。

家づくりのために

奈良は古代からの山陵のたもとにT様邸はある。新居の計画が持ち上がる2018年まで、ご家族は関東で暮らしていたが、お二人の地元である関西で子育てを行いたいという想いに至り、この地に戻ってきた。

旦那様:「この辺りは自然も豊かだし、のびのびと暮らせると思いまして、長男が小学校に上がるまでに自分たちの家を構えたいと決意しました」。

奥様:「建築予定のこの土地が市街化調整区域だったこともあり、ハウスメーカーと打ち合わせが始まってから実際に家が建つまでに2年ほどかかりました」。

その期間は、ちょうど世界中がコロナ禍に見舞われた時期と重なる。外出が制限され、家で過ごす時間が長くなったことで、人々が住まいに求める価値観や暮らし方、家に対する考え方が変わりつつあった時期だ。T様ご家族にとっても、住まいについて深く、細部まで考える契機となった。

住まいへの強い想いを抱いていた奥様は、この期間に驚くべき行動に出る。なんと、家づくりのためにインテリアコーディネーターの資格を取得したのだ。

奥様:「私の祖父が大工で、実家も祖父が建てたので、子どもの頃から家づくりに興味がありました。きっと一生に一度の家づくりだし後悔したくないという思いが強くて、自分でも基本的な知識をつけておきたいなと思ったのです。上の子が幼稚園に行っている間、下の子が昼寝をしている隙間時間を使って、1年ほど勉強しました」。

インテリアコーディネーターを仕事にするためではなく、自分たちの理想の住まいを高い解像度で計画し、ハウスメーカーとの打ち合わせをスムーズに進めるための学びだった。この徹底した準備が、後に完成する美しい空間づくりへと繋がっていく。

アイコニックな名作ワイヤレススピーカー Bang & Olufsen(バング & オルフセン) のBeosound A9がすっきり馴染むリビング

核となる家具

黒いスチールの鉄骨階段の下、ぬくもりのある“なぐり”加工の板壁を背にして佇む、RitzwellのJABARAサイドボード。細く端正なスチール脚が、階段のシャープなフレームと美しく呼応し、ナチュラルでありながらも空間を引き締めるモダンさを放つ。これがT様邸のインテリアの核となっている。

JABARAサイドボードとの出会いは、まだ家を建てる前の段階、住宅展示場を訪れた時のことだった。

奥様:「同じJABARAサイドボードが住宅展示場に置いてあったのです。一目見た瞬間に“あ、これがいい!”って、本当に一目惚れでした(笑)」。

それまでRitzwellというブランドの存在自体を知らなかったという奥様だが、そのプロダクトが持つ独特の佇まいに心を奪われたという。JABARAシリーズは男性に好まれることが圧倒的に多い商品なだけに稀なケースだ。だから奥様を魅了したことはとても嬉しい。

JABARAシリーズは空間に置きたくなる、それ自体が存在感を持つ家具としてデザインされている

奥様:「サイドボードを置くという計画自体、元々ありませんでしたが、展示場のデザインが私たちの建てたい家のイメージに近くて、しかもそこにJABARAがあまりにも綺麗に馴染んでいました。力強いけれど繊細で品がある。営業の方に“これも買いたいです”とすぐに伝えました(笑)」。

T様ご夫婦は展示場に置かれていた同じサイズ・仕様のJABARAサイドボードを選択。ソファなどの他の家具を選ぶよりもずっと早い段階で、住まいのシンボルとなる家具にこのサイドボードを選んでいただいたのだった。

旦那様:「家やインテリアに関しては、僕の意思はほとんど入っていないです(笑)。こだわりがないというよりも、妻の希望を叶えたい気持ちです。打ち合わせも横で聞きながら、もっぱら子どもたちの面倒を見ていました(笑)」。

そう笑う旦那様だが、奥様への信頼は厚く、おふたりの好みは驚くほど似ているという。奥様が一目惚れしたJABARAサイドボードに対しても、旦那様はすぐに共感した。

旦那様:「なかなか他では見ない形のサイドボードですし、妻が良いと思うものには全幅の信頼を寄せています。趣味が大きく違うということはないですから」。

空間の核となる家具が早い段階で決まったことで、住まい全体の雰囲気も、JABARAが持つ上質でナチュラルな空気感へと統一されていくこととなった。

丸太を加工したスツール。シンプルだけど素材感のあるもので構成されたT様邸
なぐり加工の壁板が直線基調のJABARAのシルエットに呼応する

丁寧な所作を生む

T様邸のリビングダイニングは、わんぱく盛りの男の子二人を育てる4人家族の住まいとは思えないほど、凛としていて生活感がない。そこには、T様ご家族が実践する心地よい暮らしのルールがあった。

奥様:「マンションに住んでいた頃は、どうしてもリビングに物が溢れてしまっていたのです。でもこの家ではリビングダイニングは家族の公共スペース、社会的な場所として捉え直しました。だから私物は基本的に置かないようにして、子どもたちの物はそれぞれの部屋に片付けるよう習慣付けています」。 元々、物が少ない方だったというT様ご家族。リビングダイニングには空間を圧迫するような家具は一切ない。だからこそ、JABARAサイドボードの存在感が際立つ。

JABARAサイドボードの天板の上には、お気に入りの洋書やフレグランスボトル、そして奥様のお気に入りのバング&オルフセンのスピーカーと、レコードプレーヤーが美しくディスプレイされている
お気に入りのレコードコレクションは蛇腹戸の中に。BakarやJON VINYLなどのオルタナティブR&Bがお好み

実際に暮らしの中で使ってみて、その満足感は期待を遥かに超えるものだった。

奥様:「このサイドボードを毎日使っていると、本当に気分が上がります。蛇腹戸を開ける時の独特の感触は、唯一無二だと思います。繊細な造形なので動作が自然と丁寧になるのです。その瞬間にゆったりとした特別な時間が流れるような気がします」。

引き出しを開け、アクセサリーを選ぶことも心を整える儀式となった

奥様は、上部の引き出し(厚革)に、毎日使うアクセサリーを収納している。出かける際にそこを開けて身につけるという一連の動作が、日々の暮らしに心地よいリズムと特別感をもたらしているのだ。蛇腹戸の内には、本、子どもたちのゲーム機や電子機器、カメラなどが綺麗に収められている。

旦那様:「僕も眼鏡だけ入れさせてもらい、なるべく余計なものを入れないように頑張っています(笑)」。

RitzwellがJABARAシリーズに込めた“家具を丁寧に扱うことで、丁寧な暮らしをしてほしい”というメッセージは、T様ご夫婦の日常に完璧な形で受け止められている。T様邸に迎え入れられたJABARAサイドボードは、単なる収納家具という枠を超え、暮らしの質を確実にアップデートしていた。

日本の手仕事の矜持

普段はゲーム機が収納されているが、この日は子ども部屋へ

JABARAシリーズを象徴する、繊細に組み込まれた蛇腹戸。引き出しの前板に使われている黒い厚革。その革張り作業を担っているのが、福岡の糸島にあるRitzwellの糸島シーサイドファクトリーである。

海外のブランドと思われることも多いRitzwellだが、そのアイデンティティは日本の職人によるきめ細やかな手仕事にある。

JABARAサイドボードに使用される厚革の加工だけでも、膨大な工程が存在する。シビアな検品から始まり、傷を避けて精密に型を取る。革の断面(コバ)も、切りっぱなしではなく職人がすべて手作業で滑らかに磨き上げる。糸島シーサイドファクトリーでは、職人が1台1台の家具と向き合い、対話を重ねながら作業を進めている。
Ritzwellは、芸術品や工芸品のような圧倒的な美しさと、職人の高い技術力と生産性を両立させることに心血を注いでいる。職人が手間と時間をおしみなくかけることで、唯一無二のクオリティが生まれると信じているからだ。

「レコードをかける所作も、蛇腹戸を開閉する所作も、五感を整えてくれます」と奥様

かつて福岡に住んでいたことがあり、糸島の豊かな自然もご存知だという奥様は、こうした日本のものづくりへのこだわりを静かに感じ取っていた。

奥様:「私は日本の丁寧な手仕事が感じられるものが好きなのです。かけられている時間や熱量が感じられるからこそ、見ていて飽きないし、まるで芸術作品を家に置いているような感覚になれるのだと思います」。

工場を単なる製造ラインとするのではなく、職人が自らの工程をお客様に説明し、コミュニケーションを取りながらそのこだわりを伝える。Ritzwell表参道ショップ&アトリエにある「アトリエ(工房)」の存在も、Ritzwellのこだわりのひとつ。職人たちの手によって命を吹き込まれる、その背景を知ることで、家具への愛着はさらに深まっていくと信じている。

キッチンの窓からは南米原産のフェイジョアの花が咲いていた。秋には甘い香りの実がなるそう

毎日受け取るメッセージ

新居での暮らしも数年の歳月が流れた。それでも、リビングの定位置にあるJABARAサイドボードを見るたびに感じる確信は、今も全く色褪せないという。世の中には数多くのブランドの家具が存在しているが、T様ご夫婦にとって、この家具は今もなお特別な存在であり続けている。

奥様:「家を建てた後も、色々なサイドボードを目にしますが、やっぱりうちのが一番かっこいいなって、今でも思います(笑)。JABARAのデザインに宿っているメッセージを、毎日受け取ることができて幸せです」。

旦那様:「あの形や繊細さはやはり日本的だと思います。一見すると海外の家具のようにも見えますが、日本の職人がつくるからこそ、きめ細やかさが宿るのでしょうね」。

存在が空間を豊かにし、触れる人の所作をも美しく整えていく家具。それは単なる便利な道具ではなく、家族の日常をアップデートしてくれる良きパートナーと呼べるだろう。

職人たちの惜しみない情熱と矜持。それを迎え入れた家族の深い愛着。それらが優しく交差するこの住まいで、JABARAサイドボードはこれからも家族の記憶を刻みながら、深く美しい輝きを放ち続けるに違いない。


Ritzwellの家具から情熱と矜持が伝う限り、このDiscveryは続く。

T様ありがとうございました。

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