4月21日から26日まで開催された2026年のミラノ国際家具見本市(ミラノサローネ)。国際情勢の不安定さや複雑化が進む中にあっても、32カ国から1,900ブランドが出展し、167カ国から316,342人もの来場者(昨年比+4.5%)を数えるなど、今年のサローネは、世界の家具・デザイン業界を代表する展示会としてのゆるぎない地位を改めて確立した年となりました。
16回目の出展となるリッツウェルは、毎年、サローネの常連としての期待度も高く、世界を代表するラグジュアリーブランドのひしめくHALL9の中でも、人気ブランドの一つとして、今年も注目を集めました。
年々新たな挑戦を重ねながら、独自のデザイン哲学を発信し続けるリッツウェルのプレゼンテーションには、今年も、その世界観と進化の軌跡を体感しようと、期間中、15,000人を大きく上回る来場者が訪れ、連日賑わいを見せていました。

2026年のNEW COLLECTIONのテーマは、異素材が生み出す「ゆらぎの均衡」

静けさと緊張、重さと軽やかさといった、相反する素材を用いながら、微妙なバランスで響き合う穏やかな美しさが、使う人の心に静かな安定をもたらし、心地よい空間や時間を生み出していきます。リッツウェルのプロダクトに意図的に内包されていたデザインバランスへの考え方をより明確に表現したこの試みは、職人の丁寧な手仕事と共に、リッツウェルのものづくりの姿勢を強く印象付け、大きな話題となりました。

新商品を中心に、新素材の“STONE COLLECTION”(3種類・全9タイプ)と新塗装の“SILKVEIL(シルクヴェール) ” 2色が加わったことで、新旧の人気アイテムが相互に響きあいながら更なる魅力を開花させた、今年のリッツウェルブース。「静かな反響」をテーマに、静けさの中に、変化とリズムが織り成す空間を生み出し、その環境に身をゆだねながら家具の美しさを “余韻”として静かに楽しむことのできるブースデザインは、今年も、イタリアの建築スタジオ967archが手掛けています。

リッツウェルのプレゼンテーションにはおなじみになった、“Tokonoma”ショーケースと糸島シーサイドファクトリーの職人による実演コーナー。職人の実演を通して、リッツウェルのものづくりの姿勢と、そこから生み出される家具の魅力を感じていただけるこのプレゼンテーションは、今年も多くの関心を集めました。
デザインのベースに流れる「ゆらぎの均衡」が、リッツウェルデザインの新たな魅力となることを強く印象付けた6日間は、来場者からの高い評価と多くの共感を集めた6日間でもありました。家具デザインという枠に収まらないリッツウェルの美学は、サローネ出展によって新たに生まれたネットワークを通じて、日々世界中に拡がり続けています。

デザインの新たな可能性
新素材との新たな出会いとリッツウェルの挑戦

リッツウェルが今年発表したのは、「ゆらぎの均衡」をテーマとした“GT テーブル”と、“Well-balanced”の思想を体現する“VESPER(ヴェスパー)アームチェア”の2アイテム。
新たなマテリアルとして、オリジナルストーン“STONE COLLECTION”と、スティールの新しい仕上げ“SILKVEIL”も発表されました。異素材の響き合いから生まれた新たなデザイン表現は、今年、多くの来場者の関心を集めました。

石・金属・革といった異素材の響き合いから生まれた“GT テーブル”は、異なる素材やユニークな構造が、緊張感を保ちながらも静かに調和し、空間に穏やかな存在感をもたらします。様々に異なる要素を内包しながらも、全体としてのバランスが美しく保たれているこのテーブルは、今年のリッツウェルのプレゼンテーションテーマともなった、「ゆらぎの均衡」を最もよく体現した新作です。

一方、“VESPERアームチェア”のデザインに強く意識されているのは、リッツウェルの創業当時からの考えである、“Well-balanced”(ウェル・バランス)。“ほどよい均衡を保つ”という感覚的な要素を大事にしてデザインされたアームチェアは、使う人の心理的な安定や空間との調和をもたらし、単なる座り心地だけでなく、日々の暮らしにも心地よさを感じさせてくれます。脚部全体に流れる木のやさしい曲線と、大きく湾曲したバックレストを支えるスティールフレームが、美しいバランスを生み出し、座る人に安定感と安心感を与えています。

今年、新たなマテリアルとして多くの注目を集めたのは、リッツウェルオリジナルの“STONE COLLECTION”。コレクションのラインナップは、天然大理石、天然御影石、人造大理石(クオーツエンジニアドストーン)の3種類、全9タイプ。

石は自然が長い時間をかけて作り上げた、静かな彫刻のような存在です。リッツウェルでは、自然が生み出すその唯一無二の石材に、それぞれの表情を最大限に引き立てる表面仕上げを施すことで、さらに素材としての可能性を追求しています。その深い陰影や冷ややかな質感は、家具が持つ温もりと響き合い、空間に穏やかな緊張とここちよい余韻を生み出しながら、リッツウェルの家具にこれまでにない奥行と静謐な美しさをもたらします。 “STONE COLLECTION”は時を超えて心に残る、“静かな強さ”をかたちにしたリッツウェルの新たな素材表現です。

スティール塗装のイメージを覆す“SILKVEIL”(2色展開)の存在もまた、今回のNEW COLLECTIONには欠かせないもの。

金属でありながら冷たさを感じさせないシルクのような柔らかな質感と、温かみを感じる色合いが特徴の“SILKVEIL”は、スティールの質感を尊重しながらも、塗装とは一線を画し、“光の表情”をデザインしたような、優しい仕上がりが魅力です。絶妙に淡いブロンズCOPPERと、落ち着いた古美色GOLDは、一見するとほとんど同じようにも見える2色ですが、光の当たり方や空間のトーンによって、わずかに違った表情が現れます。光を柔らかく包み込んで生まれるその微妙な差が、スティールが放つ強い存在感を和らげ、静かに空間に溶け込むような優しさを生み出します。単なる塗装にはない深みと柔らかな色合いが、リッツウェルの家具や素材の持つ温もりと響き合い、時を経ても色あせない、穏やかで上質な美しさを描き出します。

今回のNEW COLLECTIONは、単なる新作家具の発表にとどまらず、素材の持つ可能性と、その関係性から生まれる新たな表現を提案する機会となりました。

これまでも、相反する要素が共存する在り方を大切にしてきたリッツウェル。今回、石や金属といった異なる素材に向き合い、それぞれの個性を生かしながら調和を探ることで、「ゆらぎの均衡」というテーマは、より明確なかたちとなって表れています。

素材と手仕事が響き合いながら生まれる静かな美しさ。
その探求は、これからもリッツウェルの根幹として続いていきます。

Photographer: Marco Reggi

Photographer: Marta Meoni

映像制作:nobunobu
撮影:矢口信男
企画プロデュース:成ヶ澤伸幸