一本の直線や曲線、その長さとわずかな角度の違いに、気を留める人はそう多くはない。
しかしその一本の線が、風景を変え、空気を変え、佇まいを変える。
美はその微細な差に宿るものだ。幾つもの試作と細部への執拗な手直しを経て、ようやく作品が産声を上げる。

これは家具づくりに限らず、あらゆるクリエイターに当てはまる普遍のプロセスであるはずだ。

今回紹介するN様のご職業は漫画家。現在人気連載を抱え超多忙の身ながら、
R’DISCOVERYの取材を快く受けてくださった。

家中に心地よい場所を

旦那様:「R’DISCOVERY、いつも楽しみに拝見しています。今回お声がけいただいて光栄です。頑張って家の中を片付けました(笑)」。

奥様:「すごく良い機会になりました。片付けられましたし(笑)。新築当時を思い出しました。やっぱり空間がスッキリすると家具も際立ちますね」。

N様ご家族が新居を建てたのは3年前。戸建てで育った旦那様にとって、マイホームは長年の夢であった。それから仕事場を兼ねる自宅であるため、心安らぐ空間づくりは自身の創作活動の質をも左右する極めて重要な要素だ。マンション暮らしの時にはこだわりはなかった家具選びも重要になってくる。

当初、家具選びは多忙な旦那様に代わり、奥様がリサーチに着手したという。海外の有名ブランドから地方の工房まで、有名無名に関わらず色々調べたそうだ。

当初買い換える予定ではなかったダイニングテーブルも、“思わず触れたくなる”滑らかな手触りに心を奪われたというMT TABLE

奥様:「Instagramで初めてBEATRIXを見た時に一目惚れしたんです。そしてRitzwellのホームページに辿り着きました。とにかくデザインが全部素敵で。実際にソファとラウンジチェアに座ってみたくて、早速Ritzwell東京ショールームを予約しました。でも息子が体調を崩して入院してしまい、私の代わりに主人に行ってもらったら…」

旦那様:「“分かった、じゃあ行ってくるね〜”って、軽い気持ちで伺ったら完全に魅了されちゃって。もう欲しいものばっかり。あれもこれも!みたいになっちゃって(笑)」。

奥様:「ショールームから私の携帯に動画が次々に送られてきました(笑)。これもいい!あれもいい!って。おかげで家具の予算が5倍ぐらいに膨らみました。ダイニングテーブルも当初は買い替える予定はなかったんですけど(笑)」。

MT TABLEの天板のアール、その滑らかな手触り。MARCEL(マルセル)の座り心地。旦那様は“こんな座りやすい椅子に座ったことがない。思わず触れたくなる家具”という第一印象を持った。

奥様:「主人は家を建てて好きなものだけを置く夢をずっと持っていたので、もうしょうがないかなと(笑)」。

旦那様は職業柄、家で過ごす時間がとても長い。だからこそ自分の好きな空間づくりを意識した。どうすれば飽きのこない空間にできるのか検討したという。

旦那様:「モダンな木製家具が好みで、Ritzwellがピタッとハマりました。最初海外のブランドかと思ったら、福岡の糸島で作られているメイドインジャパンと知って、益々興味が湧いてきました」。

包み込まれるようなホールド感がお気に入りというBEATRIX。「ボリューム感のある存在感、革の質感、どことなく和の要素も感じます」(旦那様)

奥様:「住宅メーカーのインテリアコーディネーターさんにも相談したら、“Ritzwellの家具だったらどれも合うでしょう”と、お墨付きをいただいたので、じゃあせっかくだし家具は長く使うものだからと、Ritzwellで揃えましょうとなりました」。

新居で暮らし始めてからもN様ご夫婦のRitzwell熱はさめやらず。MT TABLEに始まりJABARAサイドボード、LIGHT FIELDのオットマン、BLAVA(ブラヴァ)イージーチェアとオットマン、RIVAGE(リヴァージュ)スツール、GQテーブルを揃えていった。

旦那様:「今では新商品が出る度に触手が伸びます。毎年ミラノサローネでの発表が待ち遠しくて。今年はVESPER(ヴェスパー)ラウンジチェアが発表されて、ヤバい、欲しい!でももう置く場所がないって(笑)」。

「RIVAGEスツールに座ると背筋が伸びるような感じですごく気に入っています。軽いので色んな場面で活躍するし、壁の前に置くだけですごく絵になります」(奥様)
MT TABLEと相性が良いMO BRIDGEベンチは、お子様もお気に入りの場所
ダイニングの傍らにGQ TABLE。持ち運びやすさだけではなく空間のアクセントにもなる

旦那様:「家のあちこちにRitzwellの椅子を置いて居心地の良い居場所をいくつか作ってます。仕事の合間にただぼーっとスツールに座ってみたり。Ritzwellはデザインに一貫性があるのに座り心地がそれぞれ違うから、飽きないですよ」。

感情を揺り動かす1ミリ

Ritzwellの家具が旦那様の創作活動にも影響を与えているという。

旦那様:「Ritzwell愛が強すぎて、とうとう連載中の漫画の企画にRitzwellの椅子を登場させることになりました。キャラクターの心情を表すのにRitzwellの椅子に座らせた絵を描きたくなったんです。最初は今年の新商品 VESPERだけ描こうと思っていたけれど、Ritzwellさんに許可をいただいたから欲が出てあれもこれもと(笑)。2週間後が締め切りです」。

例えばRIVAGEイージーチェアには肘掛けの反りのイメージに合う日本人のキャラクター。新しいVESPERには、そのボリューミーな背もたれや細い脚の雰囲気に合う新キャラを、という風に、どれに誰を座らせるか、その座り方まで具体的なイメージがあるという。

家具のデザインやコンセプトを擬人化するような視点。さすが第一線で活躍するクリエイターだ。

旦那様:「日本のブランドであるRitzwellと日本の漫画。親和性があるのかわからないですが、例えば何か一緒にコラボレーションができるんじゃないかと、勝手に思っています(笑)。それが叶えば光栄です。その一歩目として描かせていただきます」。

第一線で活躍する漫画家からの思いがけない熱烈なラブコールは素直に嬉しい。
旦那様がRitzwellにそれほどまでに惹かれる理由とは?

旦那様:「キャラクターを考える時もそうですが、デザインは細部に宿ると思っていて、このMT TABLEの端のアールにただならぬものを感じたんです。以前Ritzwellの訪問メンテナンスをしていただいた時に、このアールはどうやって形成するのですか?とお聞きしたら、やっぱり研磨で滑らかさを出すのは大変だというお話しをされていたんです。僕もキャラクターの感情を表現するために、線の1本1本、ミリ単位で調整したりするので、そこに結構シンパシーを感じました。その1ミリで、使う人、見る人の感情を揺さぶられるか、記憶に残るかどうかが決まると思うんです」。

膨らみながら細くなり、厚みを感じさせながらも薄く見える。軽やかに見えてしっかりした安心感を与えるフォルム。旦那様はRitzwellの家具に宿る二つの性質のようなものを感じるという。

旦那様:「さりげなく“簡単ですよ”みたいな感じで、実はとんでもない技術が垣間見えます。リビングテーブルのIBIZA FORTEも、中心は厚みあってずっしりしているけど、四隅に向かってぐーっと細くなって軽やかな印象を与えます。丈夫さも担保されているフォルムを見て、すごいなと思ったんですよ。IBIZA FORTE、うちにはミニチュアがあります」。

IBIZA FORTEの1/5スケールのミニチュア。インテリアトレイとして奥様がちゃんと実用されている
仕事場の一角にはJABARAサイドボード。奥様への誕生日プレゼントとして購入された

Ritzwellは素材を無理なく無駄なく使い、無理に曲げたり加工したりせず、素材の持つ強さとしなやかさを最大限に活かしたデザインを心掛けている。金属の細い脚と重厚で温かみのあるレザーの質感、その温冷のバランスみたいなものも、デザインエッセンスとして大切にしている。

そのあたりに自然と目が向く旦那様は、やはりクリエイターならではの視点をお持ちである。

旦那様:「MARCELに初めて座った時、ちょっとびっくりしたんですよ。ストレスがないっていうか反発がないっていうのか。寄り添うようにフィットするというのはこういうことなのかと。そんな椅子にそれまで出会ったことがなかったから。Ritzwellのデザイナーである宮本社長ともお話してみたいです。デザインプロセスとか考え方をお聞きしてみたいです」。

奥様:「MARCELはちょっと横を向いてもホールド感があって、シンプルだけど背もたれが3次元的な造形で無駄がないですよね。私はBEATRIXの包まれるような座り心地にも驚きました。息子が退院した後にRitzwellのショールームに行ったんですけど、当時5歳の息子も“これがいい!”って選んでくれたのがBEATRIXとBLAVAイージーチェアでした」。

奥様のお気に入りの場所はLIGHT FIELDソファとBEATRIX。どちらかに座って、どちらかを眺める時間が至福なのだそうだ。

愛着を纏わせる

BLAVAのオットマンは仕事部屋に持ち込んで打ち合わせ時に使うことも。タイトな空間でも居場所が生まれる

旦那様:「以前、訪問メンテナンスの時に教えていただいた方法で、1週間ほど前にMT TABLEのメンテナンスを自分でやってみました。仕事の後、夜中に一人で1時間くらいでできました。普段は木目をじっくり見ることは少ないんですけど、木目に沿って無心でサンドペーパーをかけて、良い気分転換になりました」。

奥様:「ダイニングテーブルのオイル仕上げは、最初はちょっと不安もありました。子どもも小さかったし、よくこぼすし、鉛筆跡も付くからウレタン塗装の方が向いているのかなと思っていました。でもRitzwellのショールームでオイル仕上げのものを触って、スタッフさんのお話を色々お聞きしたら、もう断然オイル仕上げの方が楽しめると思いました」。

ダイニングテーブルのMT TABLEは当初壁やキッチンの色に合わせようと思われたそうだが、それだとちょっとシックになり過ぎるので、ナラ材のオイルフィニッシュを選択された

訪問メンテナンスは、オーナー様ご自身でメンテナンスを行えるようになるためのサービスだ。天然素材の経年変化が生み出す美しい表情に、一番初めに気が付いて欲しい。そして末長く快適に共に暮らし、家具に愛着を纏わせて欲しい。
旦那様から「メンテナンスが良い気分転換になる」との感想をいただいた。家具を愛着を持って育ててほしいと願う私たちにとって、その言葉は何よりの賛辞であり、確かな手応えを感じる瞬間であった。

仕事部屋横の休憩室にはBLAVAイージーチェア。ここで作画のアイデアが閃くことも
和室には壁の木製オブジェと統一感を持たせてMO TABLE(ナラ)を選択

Ritzwellへのファンレター

旦那様が漫画家になられたきっかけは、高校時代にご友人が書いた小説がきっかけだったという。

旦那様:「その小説がちょっとおもしろくて、大いに刺激を受けました。じゃあ僕は絵を描くのが好きだから漫画を描いてみようと、やってみたけど全然うまくいかなくて。めちゃくちゃ悔しかったです。それで本気になって、技術高めるからちょっと待っててみたいな感じで。そして作品がひとつできて、せっかくだから新人賞に応募してみたら、一番下の賞に引っかかりました。漫画で初めて賞金をいただいたのが高校3年生の時でした」。

初出品で受賞するとはなかなかのもの。高校3年生からキャリアがスタートした旦那様だが、漫画の作画に論理的な裏付けを持たせるために、デザイン学校にも通った。奥様と出会ったのもその頃。

今では押しも押されもされぬ人気漫画家となった旦那様。作品は男女問わず広い支持を得て、原画展も開催されている。ただ来場者もファンレターの送り主も、断然女性ファンが多いという。

旦那様:「女性は漫画に出てくるそれぞれのキャラクターのファンであることも多いと感じています。それに男性はあまり手紙を書かないのでしょうね。だから男性ファンからの声をいただくととても嬉しいんです」。

このR’DISCOVERYは、どういう方に何が響いたのか、どういう想いで使っていらっしゃるのか、Ritzwellの家具に興味がある方々へ、オーナー様の声を届けることが使命でもある。そのメッセージはもちろん、Ritzwellのスタッフたちにも届いている。

N様の連載作品は今や絶大な人気を誇る。特に10代から30代には熱狂的なファンが多く、Ritzwellの社員やその家族の間でもその話題は尽きない。

何より私たちの胸を熱くさせるのは、N様自身がRitzwellの家具のファンでいてくれることだ。Ritzwellが作り上げた家具が、世界を魅了する漫画が生まれる瞬間を共にしている。その事実は、Ritzwell社員やその家族にとってとても誇らしく、この上ない喜びである。

旦那様:「じゃあ、このインタビューは、Ritzwellの皆さんとファンの方々へのファンレターでもあるんですね。こちらこそ大ファンです。ショールームにもまたお邪魔します」。

奥様:「糸島シーサイドファクトリーにも見学に行かなきゃね」。

旦那様:「職人さんたちにも会ってみたい。そのためにはまず、締め切り前に原稿を仕上げなきゃ(笑)」。

なぜその形なのか、なぜその余白が必要なのか。吹き出しの位置はどうしてそこなのか。
キャラクターの感情をどうやって表現するか。
漫画も家具づくりと同じプロセスを辿るのかも知れない。

旦那様:「多分正解はないと思うけど、一番いい形、一番伝わりやすい構図、構成は必ずあるはずです。人間の感覚って結構鋭くて、そのちょっとの差をちゃんと感じ取っていると思います。その感覚、感情を揺り動かす1ミリを、これからも大切にしていきたいです」。

ものづくりに対する深い解釈と洞察を持った旦那様は、おそらく見えないものの翻訳者だ。

創造の核心に触れる時、より深い支持が作品を育てる。
そのファンのために、1本の線からまた始めるのだ。

漫画も家具も。

N様、ありがとうございました。

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