アーティストやクリエイターとのコラボレーションを通じて、リッツウェルの新たな可能性を模索する「MEETS」企画。第2回目は、盆栽家 島津拓哉氏と、独創的な屏風アートを手がけるMasa氏を迎えて開催されました。リッツウェル代表 宮本晋作が、コラボレートしたお二人に話をききます。

盆栽家|島津拓哉

1984年生まれ、福岡県糸島市在住。2003年に盆栽をはじめ、2008年 福岡市薬院に「GALLERY SHIMAZU」をオープン。2015年には 糸島に盆栽園を開き、盆栽リースをはじめ、なげいれの花、店舗装飾、芸術・工芸家とのコラボ展など行っている。現在糸島にある自宅兼作業場「心月庵」のオープンに向けて準備中。
https://www.shimazutakuya.com

Antiques & Art Masa主宰|Masa(市瀬政義)

1974年生まれ、京都府在住。古美術商として京都・下鴨にアトリエを構える。古いものから時空を超えて醸しだされるエッセンス、テクスチャーを「見立て」、リメイクする独自の手法を駆使し、現代の暮らしを彩るアートへと昇華するクリエイター。カフェやホテルの空間プロデュースも手がける。
https://www.art-masa.com

空間にあるすべてのものが、響き合い、引き立つように

宮本:今回のイベントでは、リッツウェルの家具に島津さんの盆栽が、その背景にMasaさんの屏風アートが飾られたわけですが、設営からスピーディーでしたよね。Masaさんがパッパッと配置を決められる感じで。レイアウトのイメージはすぐに浮かぶものですか?

Masa:お呼びいただいた空間に備わっているものすべてが、響き合って引き立つようなイメージで配置を決めてるんです。法則とかはあまりなくて、花を活けるような感覚でレイアウトしていますね。今回は、リッツウェルさんの家具と島津さんの盆栽がある。そのうえで、すべてのバランスをみて配置させていただきました。

宮本:うちの家具はアンティークでもないし、洋の要素も入っているから、正直どうなるんだろうと思っていたんです。でもすごくいい空気感が出ていますよね。

島津:家具と盆栽と背景と、3つでひとつに見えるような感覚ですよね。

リッツウェル代表 宮本晋作
盆栽家 島津拓哉さん

宮本:島津さんとは10年前くらいに商品カタログの撮影にご協力いただいてからのお付き合いですよね。僕は昔からの日本の文化が好きで、盆栽にも興味がありました。今回もってきていただいたものも、本当にすばらしいです。

島津:これは僕が一から作り出したものではないですからね(笑)。僕より年上の木ですし。

宮本:こうやって家具と合わせてみると、僕の作っているものにも日本の要素が入っているんだろうなと思いますね。自分では意識しているわけではないのですが。

島津:すんなり合う感じがありますよね。

宮本:はじめは、家具が負けてしまうんじゃないかと、ちょっと心配だったんです。アンティーク家具のほうがグッとはまる感じがするじゃないですか。アンティークって力があるから。新しいものってなかなかオーラが出ないんですよね。でも、こういったモダンですっきりした世界のなかにあると、また違った見え方があっていいなと思いました。

Masa:それは自分としても大事にしていることなんです。古い空間に古いものだけ集めても、埋もれてしまうリスクがすごくあって、その逆もしかり。新しい空間に新しいものだけあっても、“現代の気づき”しかないんです。時間幅をひろげ、そのなかでちょうどいい塩梅をさがすというのは、コーディネートをするうえで大切にしています。たとえばお寺のような古いフレームを飾るときは、新しいものを多めにもっていきますし、今回のように新しいものが並ぶ空間であったら、古いものを並べる。こってりしないように配分を考えてもってきていますね。

今後100年楽しんでらうための屏風アート

宮本:Masaさんの屏風アートには、古典的な絵が描いてあるものと、ちょっとモダンなものがありますよね。

Masa:市松模様だけの屏風は、かなりレアだと思います。時代はそれほど古くなくて1920年代くらいのものです。古典的な絵のものは江戸の後期くらいのもの。古物を扱う身としては、状態のいいものはそのまま使っていただきたいというのがいちばんの想いですが、多くのものは土蔵のなかで傷んでしまっている。修復するのがむずかしいものはゴミになってしまうわけです。それであれば、思い切って状態のいいところだけ切り取って作品にしてしまおうと考えました。そうすれば、ここからまた100年以上楽しんでいただけるわけです。

宮本:よく思いつきましたね。

Masa:ずっと海外向けに屏風の取引をしていまして、よくオークションを覗いていたんです。状態のいいものを探していたので、傷んでいるものは外して入札するわけですが、あるとき思い立ったんですね。この傷んだ屏風をトリミングして、インテリアパネルにしたらいいんじゃないかって。思いついたときは、板にスプレー糊で貼り付けようと思っていたんですが、ちょうど京都の表具屋さんにお話を聞く機会があって「それをやったらたぶん屏風は台無しになってしまうよ」と言われて。日本は夏と冬で乾湿の差が激しいので、ぴったり貼ってしまうと割れたり破れたりしてしまうんです。板と紙の間は直接貼らず、浮かせて縁だけで押さえ込む。それが紙の表情を引き出す表具の仕事だと教えていただきました。その出会いがあって、はじめて屏風パネルが成立しているんです。京都には、若い方でも伝統的な技術を継承している方がいるので、そういった環境はありがたかったですね。

Antiques & Art Masa主宰 Masaさん

宮本:なるほど、これは板に直接貼り付けているわけじゃないんですね。Masaさんの作品にはいろいろなテイストがありますが、今回リッツウェルの空間に展示するにあたってどんな選定をされたんですか?

Masa:極力モダンなものを多くして、そのなかに伝統を感じさせるような昔の絵師が描いたものを3割くらい配分しています。

空間全体のなかで“引きでみる盆栽”

宮本:島津さんがもってきてくださったもののセレクトは?

島津:リッツウェルさんの世界観に合うものを主観でチョイスしてきました。僕は空間全体のなか“引きでみる盆栽”というのを広げていきたいと思っているので、今回もMasaさんの背景と家具のバランスをみながら置かせていただきました。同じ盆栽でも、置く場所や高さによって見え方が変わりますからね。

宮本:それはよくわかります。Masaさんのギャラリーに行ったとき、骨董のイメージががらっと変わったんですよ。ものが空間を変えるし、空間によってものの見え方が変わるんだと。本物って空間を変える力があるし、ギャラリーの空間にあることで朽ちた木さえもかっこいい。ひさしぶりにウズウズするような感動をおぼえました。

島津:ぼくもはじめて伺ったときは同じ衝撃をおぼえましたね。ものを際立たせるために、こういう配置で飾るのか、と。今回は屏風を展示していますが、Masaさんはものそのものというより、“余白”を見せている感覚があるんですよね。本当に勉強になります。

宮本:展示の妙ですよね。

Masa:どうすればこれが輝くか、来てくださった方に響くかを常に考えていますね。ぼくのギャラリーには骨董の初心者の方にも来ていただきたいと思ってるんです。骨董屋って入りにくいじゃないですか。これからはじめようと思っている方に、その楽しさを伝えたいんです。

宮本:前回のUZOさんとの話にもつながりますが、日本ってすばらしい文化がたくさんあるのに、どこか“止まっている”感じがして親しめないんですよね。お茶にしてもお花にしても。

Masa:そうですね。ここにきて、“楽しさを伝える”というのが各ジャンルで必要になっているんだと思います。

宮本:もったいないですもんね。いい要素を残しながら時代に合わせていくというのがいま必要になっていると感じます。盆栽もまさしくそうですよね。

島津:その究極体かもしれないですね(笑)。

Masa:でも僕は衝撃的でしたよ。島津さんの年齢でこのクオリティの盆栽を扱っていらっしゃるというのに驚きでした。

島津:はじめMasaさんに「空間を感じる盆栽だ」と言っていただいて。僕は先ほど申し上げたように、“引きでみる盆栽”を意識していたので、そう言っていただいたときはうれしかったですね。僕のやりたかったことを体現しているMasaさんをみて、少し悔しい気持ちもしましたが(笑)。福岡と京都、離れたところで活動していますが、追いかけたい兄さんがいるみたいな感覚です。僕はもちろん盆栽をつくっていますが、それだけじゃなくトータルで見せていくことをやっていきたくて、そのためにまだまだ学び中です。

いい意味での“裏切り”が心地よい

宮本:今回僕がすごく気に入っているのがこのゾーン。一見、テーブルも椅子もバラバラな感じに見えますが、はまってるんですよね。組み合わせがおもしろい。

Masa:あそこには、あえて絵師が描いた伝統的な屏風を合わせた方がおもしろいだろうなと思ったんです。ソフトなタッチのテーブルには、つい同じようなテイストを合わせてしまいがちですが、こういうコーディネートができるのかという気づきにつながったらうれしいですね。

宮本:ひとことに「和っぽい」とも言えない、いろんな要素を感じますよね?

Masa:ぼくとしてはすごく抽象的ですが「ピリッとしている」というニュアンスなんです。一個に飲まれることなく、独立したひとつひとつのものがバランスをとって成立している。

宮本:和洋折衷と言ってしまうとありきたきですが、トーンが揃えば合うんですよね。フレンチにはワインしか合わないわけじゃなくて、なにかの要素が合えば日本酒でもしっくりくる。その垣根はないんだなとあらためて感じます。そしてまた、屏風の位置が絶妙なんですよね。ちょっと高めなんですよ。そして少しだけ左に寄っている。

Masa:僕は、目の“芯”というのがあると思っていて。水平とか垂直とか、数値で測る“芯”が、人間にとって必ずしも心地よいとは限りませんよね。目で見てバランスが取れているというのはまた違う話。その心地よさを探って配置をしています。置くもののセレクトも置く位置も、ちょっと裏切ったもので合わせていくというのが好きなんです。

島津:あのカウンターに飾ったパネルも、ふつうあんなところに置かないですよ(笑)。見ている方が、なにか意味を探してしまいますよね。

宮本:あえて“外している”という感覚なんでしょうか?

Masa:そうですね、ちょっと外すという感じです。

宮本:僕は大学生のときにトランペットをやっていたんですが、ジャズにはブルーノートという音があるんですね。これはピッチが上がりきらないちょっと外れた音なんです。本来的には気持ちいい音じゃないはずなのに、ブルーノートを入れることで深みが出る。それっていろんなことに通じているんですよね。きちっとやろうと思えばできるけど、完璧なものにはおもしろさがないんですよ。どこか外れていることに心地よさとか落ち着きを感じるのかもしれません。もちろん、外すセンスもあると思いますけどね。

島津:僕とMasaさんが合同で展示をするときは、僕が先に盆栽を置くこともあれば、Masaさんがセッティングしたところに僕が盆栽を置くこともある。その中で余白をどう生かすかは、Masaさんのセンスを感じます。

宮本:今回のセッティングもアドリブでしたもんね。なんだか、リッツウェルの家具にお二人で色をつけていただいた気がして、素直にうれしかったです。盆栽とか骨董というと、渋さの極みみたいな感覚がありますが、お二人の作りだすものには陰湿さがないというか、元気さみたいなものを感じるんです。西洋を起源とする家具、そして現代のプロダクトであるリッツウェルと、いい意味での“ズレ”があることが心地よさにつながっているのかもしれない。今日お話してそんなふうに感じました。僕としてはとても新鮮な経験でした。ありがとうございました。

Photographer:Yohei Ohno