アーティストやクリエイターとのコラボレーションを通じて、リッツウェルの新たな可能性を模索する「MEETS」企画。
画家の平松宇造氏を迎えて開催された「Ritzwell MEETS “artist” Uzo Hiramatsu」を終え、リッツウェル代表 宮本晋作が平松宇造氏の作品づくりに迫りました。

日本人のDNAで表現し、世界に発信したい

宮本:僕は家具の仕事をしているので、家具の存在や役割について考えるのですが、当然ながら、絵も飾ったときに空間が変わりますよね。置かれる空間によって絵が生きる、映えるということも含めて。

平松:そうですね。照明で変わるし、空間で変わるし、置いてあるオブジェとの関係性でも変わってくる。
でも僕は、そういった影響をあえて受けやすいものにしたいと思っています。主張を抑えるといえばいいのかな。「あ、絵がある!」「さぁ、見るぞ!」と構えるのではなく、そこにあることで「空気が変わった」くらいの存在の仕方にもっていきたい。

宮本:僕も家具づくりで同じことを大切にしています。ほどよい主張というんでしょうか。ある部分ではきちんと主張しながら、空間に溶け込むような。僕たちはアートに対してどうしても身構えてしまうというか、頭で考えてわかろうとしてしまいがちですが、宇造さんの絵は心にスッと入ってきて心地いい。アートの世界に一歩足を踏み込めたような気持ちになれます。

平松:ありがとうございます。西洋絵画には比較的コンセプチュアルなものが多くて、難しい印象があるのかもしれません。僕はもっと空気のような、匂いのような、気配のようなものが好き。
明治以降、海外の文化がどんどん入ってきて、いまは多くのアーティストが西洋的なベースでものをつくっているように感じます。でも僕は、日本人のDNAを表現していきたいし、世界に発信していきたい。安土桃山時代の屏風絵なんかを見ても、すごくアバンギャルドですばらしいんですよ。日本の文化は世界一だと思いますね。

繊細さと大胆さが融合されたリッツウェルの家具

宮本:本当にそう思います。僕も一時期イタリアで暮らしていて、その文化の素晴らしさに感銘を受けましたが、帰国して京都のお寺を巡っていたときに感じたのが、日本も全然負けていないな、ということ。
考えてみれば、建築でも食文化でもアートセンスでも、世界にまったく引けを取らないですよね。宇造さんの絵には、そういう日本人の誇りを感じます。家具はもともと西洋のものなので、そこに意図的に和の要素を入れていくことはありませんが、西洋の文化に敬意を表しながら、僕がつくることで自然に現れる日本人らしさみたいなものがあればいいなと思いますね。

平松:さきほど宮本さんがおっしゃっていた「主張しすぎない主張」のようなバランスがいちばんむすかしいと思うんですが、リッツウェルの家具にはそのいい塩梅が感じられますよね。それはすごく日本人的なところなんじゃないかな。
繊細さと大胆さが融合された強さというのか。家具の色や形、カーブなんかにもよく現れていると思います。

ライブペインティングは新たな発見のための修行の場

宮本:そう言っていただけるとうれしいです。宇造さんは絵を描かれるとき、どんなことを意識していますか?

平松:どれだけ思考から外れ、無意識に近い状態にもっていけるか、ですね。頭の中にあるものを描くのではなく、できるだけ直感的に描きたいんです。それはある種瞑想にも近い感覚で、意識してがんばるというより、修行してその域に達することができるという感じ。僕にとってライブペインティングがその修行の一環なんです。非日常的な空間に身を置いて、その瞬間宇宙につながっていくような感覚で描いています。

「Ritzwell MEETS “artist” Uzo Hiramatsu」の初日にライブペインティングを開催

宮本:それはもう、超能力に近い感覚ですね。ライブペインティングを見ていて、どういう心境なのかなと思っていたんです。真っ白なキャンバスに向かって、気持ちよさそうに描いていらっしゃいましたよね。

平松:毎回やるごとに、新しい発見がある。だからやめられないんです。自意識と、そうではない偶然のちょうどいいバランスを探しているというのかな。それが見つかったときにすごく気持ちがいい。僕がいまいちばんのテーマにしているのが、まだ見つかっていない「新しい美観」を見つけて提示できる人になりたいということ。いまはインスタグラムを使って発信することもできるので、その美観に共感してくれた世界の人とつながることができますよね。それがすごく楽しいんです。

宮本:インスタグラムは宇造さんにぴったりのメディアだったんですね。このMEETS企画は、アーティストの方とコラボレーションすることで、新しい発見や気づきがあることを期待してスタートしたのですが、今回宇造さんの絵やライブペインティングを見てとてもワクワクしましたし、刺激を受けました。僕も家具づくりでなにか新しいチャレンジをしていきたいですね。

平松:家具ももっと、引いた美学のようなものが追求できるかもしれないですね。僕はいま、存在を消していくぐらいの方向性を探っているんです。でも、たしかにそこにある。そういう存在の仕方があるんじゃないか、そんなことを考えています。

リッツウェルが注目するアーティスト、クリエイターを迎える「MEETS」企画。次回は若手盆栽家 島津拓哉氏と、独創的な屏風アートを手がける骨董商Masa氏を迎えて開催します。ぜひご期待ください。

Information
Ritzwell MEETS Takuya Shimazu / Masa

2023.2.9 Thu. – 2.20 Mon. 11:00 a.m.-19:00 p.m.
OMOTESANDO SHOP & ATELIER
定休日:水曜日 ※イベント期間中の15日(水)は定休日となります