栃木県北部、里山の山懐にW様ご夫婦の住まいがある。新居が建てられたのは2016年の9月。
Ritzwellの家具と暮らし始めたのもその時からであるから、オーナー歴はもうすぐ7年。W様ご夫婦の家づくりは、奥様のご実家のある敷地の木々を、自分たちで切るところから始まった。それは開墾と言っていい。

縁側のある家に

奥様:「隣の実家は築75年の古民家で、新築したこの場所は畑と山の一部でした。大量に原木が出たので新居には薪ストーブを置こうということになり、この風景を活かせるような設計をお願いしました。自然に囲まれて暮らす。そういう家が欲しかったんです」。

旦那様:「ご覧の通り田んぼと山並みだけの風景です。道路より敷地が高くなっているおかげで、人目を気にしない生活ができます。南向きだから陽当たりも良い。そして夫婦共々縁側のある日本家屋で育ったことを設計士さんに伝え、縁側みたいなスペースをリクエストしました」。

縁側は廊下であると同時に多目的スペースにもなる。中と外の境界が曖昧であるがゆえ、古来コミュニケーションスペースとして利用される日本建築のエッセンス。奥様には祖母が縁側でミシンを踏み、裁縫をしていた想い出があるそうだ。W様邸では明確に仕切らず、さがり天井で緩やかにゾーニングされている。

インテリア、家具、薪割りも、全て楽しんでいらっしゃるW様ご夫婦
家具やアート、自動車関係の書籍が並ぶ本棚。建築模型はW様邸の初期のプラン

奥様:「本当はこの場所に祖母の離れが建つ予定だったけれど、私が引き継いだ感じです。私が薪割りをするようになるなんて、天国の祖母が知ったらびっくりすると思います(笑)。でも薪割りは慣れれば簡単ですよ。最初は1kgの斧を使ってましたけど、今では3kgの斧ですから。綺麗に割れた時は爽快感があるんです」。

旦那様:「私は木を切って運ぶ役です。丸太でもらったり材木屋さんに軽トラで買いに行ったりしています。木の種類によって火の色や暖かさも違うことも知りました。RitzwellのBLAVAオットマンは薪ストーブ用の特等席なんです。薪ストーブは焚き始めに時間がかかるので、火の番をしながら座ります。そして火が付いたらすぐ移動させます。軽いのでとても便利です」。

TVボードは薪ストーブのそばだから木製だとちょっと心配ということで、名作USMハラーをセレクト。
軽くて持ち運びしやすい『Ritzwell BLAVA OTTOMAN』は火の番用の特等席


W様邸はゾーニングが明確で家自体がカチッとしている分、家具で変化をさせつつ、DIANA SOFAとBLAVA OTTOMANはファブリックを揃えて統一感を出した。素材やカラーをフレキシブルに選べることもRitzwell製品の魅力だ。キッチンから直線的に、ダイニングテーブル、DIANA(ダイアナ)ソファ、TVボードが並ぶ。それぞれの幅が2200mmで統一されているのは偶然だそうだが、それもありスッキリとしたLDK空間となった。

ダイアナの後ろ姿

奥様:「Ritzwellを知ったのはお家のプランニングの時、設計士さんが3DパースにRitzwellのソファやチェア、テーブルなどを当然のように描き込んであったんです(笑)。家を建てようと計画するまでは、ふたりともインテリアや家具にはほとんど関心がありませんでした。でも家具やアートを見て回るうちにどんどんはまっていき、お互いの感性や好みが似ていることにも気が付いたんです。だから自分たちで選ぶ楽しさを大切にしました。全部Ritzwellで揃えるのもカッコいいことはわかっていたんですけど、世界には多くの家具メーカーさんがあって、それぞれ情熱を持って作られているので、1ブランドに絞るのは勿体無いと思い色々吟味しました。チグハグにならないようにコーディネートを考えながら」。

旦那様:「外苑前のRitzwell東京ショールームにも何度か訪れました。触ってみないとわからないから。世界観とか」。

奥様:「ソファは壁を背にしないので、後ろ姿が美しいものを探していて、ダイアナを初めて見た時、後ろ姿どころか、どこから見ても360度美しくて、ため息が出ました。斜め後ろから見た曲線美が何とも言えません。ただ、ちょうど家具選びの頃、私が交通事故の後遺症で、作りの悪いソファだと10分も座っていられないという体調だったんです。それがお値段が高ければ大丈夫ということもなかったので、色んなブランドのショールームに行って30分以上は座らせもらいました。そして最終的に、Ritzwellともう一社に絞りました。もう一社の方は構造・技術的に申し分ないけれど、デザインは圧倒的にRitzwellのダイアナが好みだったので、大いに迷いました。Ritzwellのショールームでは技術的なことはあまりおっしゃられなかったから、一体どういう作りになっているのか謎だったので(笑)。後日インテリアコーディネーターさんにその話をしたら、Ritzwellに問い合わせてくれて、ダイアナの内部の特徴について、可能な範囲で説明してもらいました。それで安心できたし、誠実な対応に感謝しました」。

旦那様:「そう、カタログには載ってないほどの情報を出してくれたよね。それでRitzwellは見た目の美しさだけではなく、設計的にも実はすごいことをやっていたことがわかりました(笑)。これで迷いなくダイアナに決めたんです」。


Ritzwellは家具に触れる人の情感をとても大切にしている。構造的なアピールをあえてしていなかった理由として、生活の中で徐々に感じて欲しいと思っているからだ。W様ご夫婦をドギマギさせて申し訳なかったけれど、最終的にDIANA SOFAをお選びいただけて良かった。港区北青山に2022年にオープンした『Ritzwell表参道ショップ&アトリエ』には糸島シーサイドファクトリーから交代で職人がやって来て、ATELIERと呼ばれる工房で作業を行う。職人の手しごとを見学できるだけではなく、作り手と使い手の出会いの場になっている。

好きなものだけを

旦那様:「我が家の家具の半分はヴィンテージですけど、60年も前のものが今も普通に使えます。当時の職人さんの手仕事が緻密で丁寧だからか、木製ダボがピッタリ入っているのを見ると良いなって思います。でもヴィンテージも含め同じウォルナットの家具は、メーカーによっても木質が違います。ダイアナソファは裏側にまで良い木材を使っていることが、オイル塗ってるとよく分かりますね。メンテナンスは生活の一部になってますから」。

奥様:「私もヨガをやりながら下からソファを見ることがあるんですけど、ああ綺麗だなと思わずヨガのポーズのまま写真撮ってたら、主人に“何やってるの?”と言われたこともあります(笑)。そういう見えないところまで丁寧に作られている家具って意外と少ない気がします」。


奥様:「我が家は薪ストーブで室内が乾燥するし、12月だとLDKの半分くらいまで陽が差し込みます。逆に夏はほとんど直射日光はなくほの暗いほどです。窓を開ければ山からの涼風も抜けます。季節の変化をはっきり感じ取れる家ですけど、その分家具のお手入れが欠かせません。そう、Ritzwellのメンテナンスキットに添付文書があるじゃないですか、その中に“お客様の愛情とメンテナンスにより美しい状態が保てます”って書いてあって、なんて素敵な会社なんだ!と思いました(笑)。家具に対する愛情が溢れている。私も以前医療器具の添付文書を書いたりする仕事をしていたので少し事情が分かる分、尚更リッツウェルは添付文書まで素敵!と思いました」。

WOOD CARE KIT(2022年5月発売・オリジナルメンテナンスキット)のケアオイルは、揮発性分を含まない天然素材の優しい香り

育て甲斐

自分たちでコーディネートされたW様邸のインテリア。インテリアに求めるものは何なのだろうか。

奥様:「大事なのはバランスと質感、作りの良さでしょうか。結局は自分たちが好きなものだけを集めて楽しんでいるんだと思います。絵を掛け替えるようにローテーブル(IBIZA FORTE LIVINGTABLE)も、よく移動させて使います。冬場は陽が当たらない和室に置くことが多いです。手間なんだけどその手間を楽しむ感じですね、移動もメンテナンスも。ずっと同じ場所にあると何でも新鮮でなくなるから」。

旦那様:「私は服とか靴とか車も、永く付き合いたいから育てるような気持ちで使います。例えば良い靴だとシューキーパーを入れているだけで皺が消えたりするし、だからこそ磨き甲斐がある。Ritzwellの家具にも育て甲斐を感じます」。

奥様:「隣の実家は全部無垢材です。子どもの頃から廊下がいつもピカピカでした。でもそれは祖母と母が手入れをしていたからだと、工業化された建材で造られたアパートに暮らして、ようやく気が付きました。この家はウォルナットの無垢床を主役にしたいと考え家具やインテリアをコーディネートしたのですが、いつまでもその素敵な質感を保てるように母や祖母のように手入れをしていこうと決めました」。

7年使っていても“愛情”により綺麗に保たれた『IBIZA FORTE LIVING TABLE』。
季節に応じてリビングと和室で配置を変えても違和感なく馴染む

Ritzwellヴィンテージ


奥様:「ヴィンテージ家具を使っていると思うんですけど、ヴィンテージ家具はちゃんとマーケットがあって、需要とのバランスで取引されます。でも現行の家具だとそういう仕組みの面で遅れている気がします。どうしても手放さないといけない時もあると思うんです。例えば、Ritzwellの家具をネットオークションなんかで見かけたくないし、雑な扱いをして欲しくない。構造までちゃんと分かっている職人さんがメンテナンスして、適正な価格で再販して次のオーナーに引き継いで欲しいと思います。私も30年前のRitzwellの家具にも興味がありますよ。Ritzwellはヴィンテージの域まで使えるはずなので、私が築75年の実家を改装して展示販売したいくらいです(笑)。そういうの、きっと素敵だろうな」。

消費的ではなく、人生に永く寄り添う家具たちに囲まれて、自分たちらしい暮らし方を実践されているW様ご夫婦。
『Ritzwellヴィンテージ』というフレーズは、特に心に響いた。
創業から30周年。“時と共に味わいを増しながら、使う人の愛着を記憶し続けるような、かけがえのない家具を作り続けたい”と考えるRitzwellが、すでにそういう時期に差し掛かっていることの現れなのかも知れない。長くご使用いただいているオーナー様の声を聞きたくてお伺いしたけれど、今回もオーナー様の家具への愛情と共に、大切な気付きを頂いた。


奥様:「私たちの暮らしは、これからもあまり変わらないと思います。冬の薪割りは続くと思うし…。でも、やってみたいことはたくさんありますよ。まずは古民家を少しずつ改装するところから始めたいですね、また自分達で(笑)」。

本当にRitzwellヴィンテージを始めてしまいそうなW様ご夫婦。ありがとうございました。これからも家具ともども末永くお付き合いください。

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