石田様は福岡県久留米市の内科医院を営んでおられる。お父様が産婦人科をこの地に開院し、2001年二代目として後を引き継がれた。

「でも僕は内科を選びました。産婦人科の勉強もしましたが向いていませんでした(笑)。それに産婦人科って激務なんですよ。24時間365日、いつ産気づいた妊婦さんが運び込まれて来るか分からない。そんな父の姿を間近で見ていたからでしょうね」。

石田医院は地域に根ざした献身的な対応と、石田院長の柔らかい物腰で評判が良い。HPはまだない。

「SNSもエゴサーチもしません。見ると凹みますから(笑)。知り合いの先生たちの様子を見ていると、恐ろしくて(笑)。でもHPくらいは必要かなと最近思い始めました」。

応接間をつくる

Ritzwellとの出会いは2017年、医院併用住宅として建て替え計画の時だった。建築事務所の設計士さんにRitzwellを紹介してもらい、初めてカタログを見た。その時の印象を石田様ご夫婦はこう語る。

旦那様:「シンプルでスタイリッシュな印象で、木の質感とデザイン性が高いと感じました。商品ラインナップも色々ありました。海外のブランドかなと思ったんですが、地元福岡じゃないですか」。

奥様:「私もそれまで存じ上げなかったのですが、設計士さんに“一緒にRitzwellのショールームに行きましょう”と誘っていただいて、見に行ったら、ああなるほど!と。今度主人と一緒にまた来ます!となりました」。

DIANAソファとIBIZA FORTEリビングテーブル。UNO TVボード、OS TABLEとRIVAGEのスツールはウォールナットで統一感を持たせた

最初に購入したのはDIANAソファとUNO TVボード。IBIZA FORTEリビングテーブルはソファに合わせてその後購入した。応接間の家具はウォールナットで統一し、落ち着いた色調に。石田様ご夫婦は新居の完成後、少しずつ家具を揃えていった。

Ritzwellの最初の印象はどんなものだったのだろうか?

旦那様:「Ritzwellの印象は今も変わりません。これまで購入した家具はどれも“選んで良かった”と思えるものです。全部気に入ってます」。

奥様:「ダイニングテーブルの買い替えのタイミングにはもう、Ritzwell以外は考えられなくなっていました。建て替える前に使っていた家具は、結婚当初に私の父が買ってくれたもので、全部手放したくない気持ちがありました。でも不具合が出た順番にお別れして、Ritzwellの家具に入れ替える形でお迎えすることになりました」。

応接間のUNO TVボードにAV機器はひとつもない。ここは旦那様が静かに心落ち着かせるための空間でもある

2017年のRitzwellは、まだ糸島シーサイドファクトリーはなく、福岡市博多区の板付にショールームと小さな工房があった頃だ。

奥様:「板付のショールームで実際に座り心地も確かめられたのも良かったですが、製作されているところ、製作過程が見られたのも良かったです。作り手の顔が見えることに好感が持てました。お船に乗ってやってくるものより良いと思いました(笑)」。

旦那様:「ショールームに何回も見に行かせていただいて、その時々の私たちの要望に合致したものに巡り会うことができました。スタッフさんに相談しながら実際に見られるのが嬉しいですし、メンテナンスの相談もできますから」。

奥様:「一度に揃えるのもいいですけど、徐々に揃えると、その度にショールームにお伺いして関係が途切れない気がして、それも楽しみでした」。

建て替えた医院部分には院長室を設けなかった。その役割を担っているのが2階にある住居部分の応接間という訳だ。また医療関係の来客も受け入れる場所であるため、家具選びにも独自のルールがあった。

旦那様:「ショールームで実際に家具に触れて、すごくしっくりきたんです。応接間はシックにして、ダイニングは明るい色味にして雰囲気の切り替えもできました。素材や色を選ぶことで、対応できるところも良いですよね」。

奥様:「L型のソファに憧れはありましたけど、応接間には初めてお目にかかる方もいらっしゃるので適度な距離感を保ちながら、尚且つリラックスできる方が良い。という主人の意見でDIANAソファをふたつにしました」。

OS TABLEとRIVAGEのスツールは、軽くてフレキシブルに使えるので何かと重宝している

切り替える場所

石田医院は医院併用住宅。職場との距離が近すぎるゆえの、オンとオフの切り替えの難しさなどはあるのだろうか。

奥様:「医院の上に住んでいますので、主人は自宅の階段19段で気持ちを切り替えなくちゃならなくて、たまに引きずってて険しい表情の時もあるんですけど、そういう時にはまず応接間のソファに座り、気持ちを切り替える場所になっているようです」。

応接間は落ち着き空間、キッチン・ダイニングは活動空間と、中庭を中心にゾーニングで役割が振り分けられている
石田様邸の建築のコンセプトは中庭。中庭を中心に『口』の字で取り囲む間取りは、プライバシーと彩光を両立できる

旦那様:「病院の建物は患者さんファーストなので、医者や看護師は窓のない部屋を使うことが多いんです。大学病院なんかも外光が入る部屋は全て患者さん用で、医療従事者は1日陽の光を見ないこともあるんです。建て替え前の医院もそうでした。だから明るい光が差し込む中庭にとても憧れがありました」。

中庭はお子様が小さい頃はプールで遊んだり、コロナ禍にはテントを張ってキャンプをしたりしたそうだ。プライバシーが守られている気兼ねのない空間。中庭は医院併用住宅ならではの課題を解決するのだ。

旦那様:「1階は患者さんの顔色がよくわかるように白い光。2階の住居部分には暖色系の照明を使っています。リラックスできるし、家具の見え方も優しくなるのが良いんです」。

奥様の御祖母様が描かれた油絵は本格派。「美しいものが好きな祖母も人に観てもらえて嬉しいと言っています」
螺旋階段もお客様を誘うだけではなく、旦那様の気持ちの切り替えを助ける空間でもある

この日はクッションのお手入れ方法を伝授。

ここで医院の電話回線が鳴る。旦那様が受話器を取るが、まだベルが鳴っている。もう1回線あるのだ。

日曜日のお出かけ前に電話が鳴って急患が発生し、お出かけが中止になったり、お子様にも「僕はお父さんみたいに忙しい仕事はしたくない」と言われたこともあるという。

奥様:「産婦人科という環境で育った主人は、内科ですが休日も関係なく対応することをいとわないみたいです。以前の家はドアひとつ隔てた医院でしたからプライベートがないような感じでした。今は上下階で分かれているので気持ちは幾分楽になりました」。

それから診療日のお昼に麺類は禁止だそうだ。理由は食事のタイミングを逃すと伸びてしまうから。実際に逃すことが多いという。

旦那様:「医師になって食べるのが速くなったし、どこでもすぐ眠れるようになりました(笑)」。

奥様のお気に入りのMC TABLEとCLAUDE(クロード)チェア。ここで事務仕事も行うそうだ

実は石田様邸のMC TABLEは購入から1年経った頃に天板に亀裂が見つかり交換することになった。

奥様:「すでに1年間使っていましたから、愛着もありました。下の子はまだ小学生だったし普段はカバーをしていたので、気付くのが遅くなったのです。ちなみに“亀裂が入ったこのテーブルは、引き取られた後どうなるんですか?”って聞いたんです。廃棄されるようでしたらこのまま使い続けますって。そうしたら、再生して第二の人(家具)生があることを知って、安心して新しいものに交換してもらいました。木目の感じも全然違って今のものの方がはっきりしています。それから天然の無垢材だから冬場は加湿器を使うと良いこともアドバイスしていただきました」。

また電話が鳴る。

医療の現場も働き方改革が進んでいるというが、旦那様にその実感はあまりない。休める時に休み、食べられる時に食べ、寝る。それが地域に根ざした開業医のライフワークバランスなのだろうか。

旦那様:「大学時代に公衆衛生の先生が“このまま少子化が進めば30年後に大変な状況になる”とおっしゃっていて、本当にそうなりましたね。コロナ禍でも色々変わりました。病院の受付もこれからはオープンな作りが良いと言われてそうしたのですが、状況が変わって空間を隔離するのが大変でした」。

これからの手仕事は

旦那様:「先日ある病院の研究会に行ったら、僕より年上の先生がちょこんと座っていらっしゃる。どうしてかなと思ったら、今は内視鏡手術が当たり前になっていますから、大きく開腹して手術をした経験のない先生が多いのです。でも難しい内視鏡手術の場合、何かあったら開腹しないといけない。その時は経験豊富なベテラン先生のサポートが必要なのだそうです」。

旦那様が内科を選んだもうひとつの理由に、当時外科は早くて50代後半で引退することがあった。視力の衰えが即手術に影響するのだ。だが今は拡大画面を見ながら手術も可能な世の中になった。かつ仮想現実で手術の研修も積める。

旦那様:「これからの医療はAIが必要不可欠になっていくでしょうね。例えば胃カメラで小腸を検査すると、小腸はとても長いから写真枚数がとても多い。それをずっと見て確認しないといけない。そこはAIにお任せしたい(笑)」。

AIや最先端の機器を導入して効率化も図りながら、人の空いた時間を、感性が必要な人の手でなければ行えない仕事に充てる。これは医療も家具作りも共通しているのかもしれない。

感性を磨くこと。それこそがAIとの共存社会で人が得ることができる有益性だろう。変わらない手仕事の価値を維持するために。

DIANAソファにあった擦り傷もメンテナンスできれいに

電話台

今後Ritzwellに期待することはなんだろうか。

奥様:「そう、電話台!電話台を作って欲しいです」。

旦那様:「うちはどうしても固定電話を置かなくてはいけなくて、しかも配線が通っている壁のそばに置くしかない。以前からのものを使い続けていますが、できればRitzwellのものがあれば嬉しいです。今は電話台を置く家庭も珍しいとは思いますが、よろしくお願いします(笑)」。

残念ながら現在Ritzwellの商品ラインナップに電話台はない。
今後、石田様のご希望に添えることができるか分からないが、貴重なご意見であることは確かだ。

このR’DISCOVERYインタビューも、2023年に開設したRitzwell owners club(オーナーズクラブ)も、オーナー様の生の声をもっと知りたいという理由から始まった。どういう方がどういう想いで選んでくださったのか、要望やお困りごとを汲み上げるべく活動している。

すべてRitzwellの家具と生涯を共にされるオーナー様をサポートするためだ。

4回目の電話のベルが鳴り静かに立ち上がった旦那様。丁寧に対応されるその後ろ姿に医師としての天命を見た。
真摯な医師にSNSもエゴサーチもそもそも必要ないのかもしれない。

だから石田様ご夫婦がRitzwellの家具選び、愛してくれることを、この上なく誇らしく思う。

本当にお忙しい中、ありがとうございました。

医療法人北野三清会 石田医院
岡県久留米市北野町中3286−2

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